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労災保険給付の請求手続き方法とは?

最終更新日 2024年 06月18日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠
労災保険給付の請求手続き方法とは?

この記事を読むとわかること

業務中や通勤中にケガや病気、障害、死亡などが起こった場合、労災保険による補償を受けられます。

ただし、労災保険の給付を受けるには手続きが必要です。
放っておけば会社が手続きをしてくれるというものではありません。

労災給付にはさまざまな種類があり、それぞれ請求の手続きが必要です。
労災保険の給付を受けるにはどのように手続きをすればいいのでしょうか?

ここでは、労災保険給付の金額と内容や、各種請求手続きについて解説します。

労災保険の給付内容と金額

労災保険では、ケガや病気の治療費や休業損害などさまざまな補償を受けられます。
まずは、労災保険の給付内容と具体的な金額について解説していきます。

療養(補償)給付

療養給付は、労災によるケガや病気を治療するための費用を補償するあめの給付金です。

治療費や手術費用、薬代などが該当します。

整骨院などで鍼灸の施術を受けた場合や、自宅療養でかかる看護費用も療養給付の対象になります。

通院費用も療養給付の対象ですが、原則的に居住地または勤務地から片道2キロ以上の通院であり、以下のいずれかに該当する場合のみが支給されます。

  • ・同一市町村内の傷病の診察に適した医療機関への通院
  • ・同一市町村内に適切な医療機関がないため、隣接する市町村区内の医療機関への通院
  • ・同一市町村内や隣接する市町村内にも適した医療機関がないため、それらを超えた最寄りの医療機関への通院

療養給付が受けられる期間は、治療によって症状が完治するまでの期間にかかった費用、もしくはこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めない「症状固定」になるまでにかかった費用です。

休業(補償)給付

労災によって病気やケガを負い、療養のために労働ができなければ賃金を受け取ることができません。

こうした場合には、休業している期間の生活を補償するための休業給付を受給できます。
休業等給付の金額は、以下の計算式で算出します。

休業(補償)給付=給付基礎日額×(休業日数―3日)×60%
※給付基礎日額とは、労災発生日の直前の賞与を除いた3カ月分の賃金総額を歴日数で割った金額です。

上記の計算式から分かるように、休業給付では直近の賞与を除く給与の6割が支給されます。

また、休業給付を受ける人には、休業特別支給金も併せて支給されます。

休業特別支給金は、給付基礎日額の20%分です。

この休業特別支給金と休業給付を併せれば、給与の8割をカバーできることになります。

障害(補償)給付

労災によって負ったケガや病気を治療したものの後遺症が残る場合には、障害給付を受けられます。

障害給付を受けるには労災保険の「後遺障害等級の認定」を受ける必要があり、該当する等級に応じた給付金を受給できます。

後遺障害等級は1から14までの等級に区分されており、症状に合わせて等級が決められます。

後遺障害等級は数字が小さくなるほど障害の重症度が重くなます。

後遺障害等級 障害(補償)給付金 障害特別給付金 障害特別支給金
14級 給付基礎日額×56日分 算定基礎日額×56日分 8万円
13級 給付基礎日額×101日分 算定基礎日額×101日分 14万円
12級 給付基礎日額×156日分 算定基礎日額×156日分 20万円
11級 給付基礎日額×223日分 算定基礎日額×223日分 29万円
10級 給付基礎日額×302日分 算定基礎日額×302日分 39万円
9級 給付基礎日額×391日分 算定基礎日額×391日分 50万円
8級 給付基礎日額×503日分 算定基礎日額×503日分 65万円
7級 給付基礎日額×131日分 算定基礎日額×131日分 159万円
6級 給付基礎日額×156日分 算定基礎日額×156日分 192万円
5級 給付基礎日額×184日分 算定基礎日額×184日分 225万円
4級 給付基礎日額×213日分 算定基礎日額×213日分 264万円
3級 給付基礎日額×245日分 算定基礎日額×245日分 300万円
2級 給付基礎日額×277日分 算定基礎日額×277日分 320万円
1級 給付基礎日額×313日分 算定基礎日額×313日分 342万円
※算定基礎日額は、労災が起こる前の1年間で支払われた特別給与の総額を365日で割った金額です。

後遺障害等級別の給付金は、上記の表を参考にしてください。

後遺障害等級1級~7級では障害(補償)年金・障害特別支給金・障害特別年金として支給され、障害特別支給金は一度のみの支払いになりますが、障害年金と障害特別年金は毎年6期に分けて支給されます。

一方で、後遺障害等級8級~14級は障害(補償)一時金・障害特別支給金・障害特別一時金として保障され、全て一度支払われれば終了となります。

【関連記事】
労災における後遺障害等級表
 

遺族補償給付

労災で死亡した場合、遺族は遺族補償給付を受けることができます。
遺族補償給付には、「遺族年金」と「遺族一時金」の2種類があります。

遺族年金

遺族年金は、死亡した労働者の収入で生計を維持していた配偶者や子供、父母、祖父母、孫、兄弟姉妹が該当します。

遺族年金の受給額は、遺族の人数によって異なります。

遺族人数 年金額
1人 年金給付基礎日額×153日分
55歳以上の妻、障害状態の妻の場合 年金給付基礎日額×175日分
2人 年金給付基礎日額×201日分
3人 年金給付基礎日額×223日分
4人 年金給付基礎日額×245日分

遺族一時金

遺族年金の受給対象者がいない場合には、一時金が遺族へ支給されます。 支給される金額は、以下の通りです。

遺族一時金 給付基礎日額×1000日分
遺族特別支給金 300万円
遺族特別一時金 算定基礎日額×1000日分

葬祭料

労災によって死亡した労働者の葬祭をする際にかかる費用が葬祭料として給付されます。

葬祭料は、実際に葬祭でかかった費用とは関係なく、「315,000円+給付基礎日額30日分」もしくは「給付基礎日額60日分」の小さい金額の方が支給されます。

傷病(補償)給付

労災によるケガや病気の療養を開始して1年6カ月以降も治癒しておらず、症状固定していない場合に給付される金銭です。

障害等級第3級以上に該当するような重度の病気やケガの場合に給付されます。

障害給付は症状固定後に支給されますが、傷病給付は症状固定前に支給されるという違いがあります。

介護(補償)給付

労災によって重篤な病気やケガを負い、介護が必要な場合に給付されます。

介護給付の対象者は、障害等級第1級または第2級の精神・神経並びに胸腹部臓器の障害があり、実際に介護を受けている人です。

支給額は、常時介護と随時介護で異なります。

常時介護では171,650円を上限とした実際に支払った介護費用分が支給され、親族による介護を受けていて支出が73,090円以下の場合には73,090円が支払われます。

一方で、随時介護では85,785円を上限とした実際に支払った介護費用が支給され、親族による介護を受けていて支出が36,500円以下の場合は36,500円が支払われます。

労災保険給付の各種請求手続きの方法

これまで解説したように、労災保険にはさまざまな種類があります。

労災保険の給付を受けるには、状況に応じて必要な給付の各種手続きを行わなければなりません。

ここからは、労災保険給付の各種請求手続き方法をご紹介します。

療養(補償)給付

療養給付の請求手続きは、受診先の病院によって異なります。

労災病院や労災保険指定医療機関を受診した場合と、それ以外の医療機関を受診した場合、そして通院にかかる交通費の請求方法は以下の通りです。

労災病院・労災保険指定医療機関

労災病院または労災保険指定医療機関で受診する場合は、受診する医療機関の窓口で「療養の給付」の請求書を提出します。

この請求書を受け取った医療機関は労働局へ費用を請求するため、被災労働者は窓口で費用を支払う必要がありません。

受診後に薬剤を薬局へもらいに行く際も、同様に薬局で請求書を提出します。

医療機関へ提出する請求書は、業務災害の場合は「様式第5号」を使用し、通勤災害の場合は「様式16号の3」を使用します。

それ以外の医療機関

労災病院・労災保険指定医療機関以外の医療機関を受診する場合には、窓口で支払う治療費を一度自分で立て替える必要があります。

全額を立て替え清算した後に、所轄の労働基準監督署長へ請求書と治療費の領収書を提出します。

そうすると、労災認定後に立て替えた費用が支給されます。

この場合に提出する請求書は、業務災害の場合は「様式第7号」を使用し、通勤災害の場合は「様式第16号の5」を使用します。

交通費

通院にかかる交通費も要件を満たしていれば請求することが可能です。

通院にかかる交通費を請求する場合には、労働基準監督署長宛に以下の書類を提出します。

  • ・業務災害の場合は「様式第7号」の請求書
  • ・通勤災害の場合は「様式第16号の5」の請求書
  • ・通院移送費等請求明細書

通院移送費等請求明細書は、労働基準監督署ごとに様式が異なります。

主に、交通手段や通院区間、通院回数、請求金額を記入することになり、タクシー利用の場合は請求書や医師の証明なども必要になります。

自家用車を利用した場合には、通院経路を記載した地図も添えて提出します。

休業(補償)給付

休業給付を請求するには、必要書類を所轄の労働基準監督署長に提出します。 この時に提出する書類は、以下の通りです。

  • ・業務災害の場合は「様式第8号」の請求書
  • ・通院災害の場合は「様式第16号の6」の請求書
  • ・医師の証明書
  • ・賃金台帳
  • ・出勤簿の写し
  • ・障害年金を受給している場合は支給額の証明書

休業給付は労働者自身が請求書を提出するものですが、場合によっては会社がサポートや代行してくれることがあります。

障害(補償)給付

障害給付は、療養を経てもこれ以上治癒しないという「症状固定」の状態になってから請求することができます。

そのため、療養級の申請や受給を経てから行う請求です。

所轄の労働基準監督署長に必要書類を提出した後に審査を受け、障害等級が確定してから支給されます。

労働基準監督署長へ提出する書類は、以下の通りです。

  • ・医師の診断書やその他検査の書類等
  • ・事業主の証明
  • ・業務災害の場合は「様式第10号」の請求書
  • ・通勤災害の場合は「様式第16号の7」の請求書

障害給給付には医師の診断書が必要ですが、診断書の作成には費用がかかります。

この費用は、業務災害の場合は「様式第7号」、通勤災害の場合は「様式第16号の5」の請求書を提出すれば、上限4,000円まで補償されます。

遺族(補償)給付

遺族給付を請求する場合は、死亡の翌日から5年以内に所轄の労働基準監督署長へ必要書類を提出します。

必要書類は、以下の通りです。

  • ・業務災害の場合は「様式第12号」の請求書
  • ・通勤災害の場合は「様式第16号の8」の請求書
  • ・被災労働者の死亡を証明する書類
  • ・受給権者の戸籍謄本等
  • ・被災労働者の収入で生計を維持していたことを証明する書類

受給権者が2人以上いる場合には、一人が代表者として「様式第7号」を提出し、年金の請求と受領を行います。

葬祭料

葬祭料を請求する場合には、死亡の翌日から2年以内に所轄の労働基準監督署長へ必要書類を提出します。

遺族給付よりも時効が短いので注意が必要です。

葬祭料の請求手続きで必要になる書類は、以下の通りです。

  • ・業務災害の場合は「様式第16号」の請求書
  • ・通勤災害の場合は「様式第16号の10」の請求書
  • ・被災労働者の死亡を証明する書類
  • ・受給権者の戸籍謄本

傷病(補償)給付

労災による療養を開始して1年6カ月を経過しても症状固定していない場合には、傷病給付を請求できます。

傷病給付に関しては、療養開始から1年6カ月を経過した頃に所轄の労働基準監督署長より申請手続きをするように連絡がくることが一般的です。

その指示に従い、手続きを進めます。

療養開始から1年6カ月を経過しても症状固定をしていない場合は「様式第16号の2」を、療養開始から1年6カ月を経過しても傷病年金の支給要件を満たしていない場合は「様式第16号の11」を所轄の労働基準監督署長へ提出します。

介護(補償)給付

介護給付を受ける際には、以下の書類を所轄の労働基準監督署長へ提出します。

  • ・「様式第16号の2の2」の請求書
  • ・障害の部位・状態およびその障害に伴う日常生活の状態に関する医師または歯科医師の診断書
  • ・介護費用を支出して介護を受けた日がある場合、その日数や支出した費用を証明できる書類
  • ・請求人の親族等による介護を受けた日がある場合、介護に従事した者のその介護の事実についての申立書

まとめ

労災保険給付は労働者やその家族を守るための給付金であり、ケガや病気、障害や死亡など状態によって受けられる給付内容や金額は異なります。

そして、それぞれの給付を受けるにあたって手続きも異なるため、注意が必要です。

ご自身で請求の手続きが難しい場合もあれば、請求が認められずに困ってしまう場合もあるでしょう。

そうした場合には、専門家である弁護士に相談して請求のサポートを受けることをおすすめします。

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