過労死で労災認定されるための7つのポイント
最終更新日 2024年 09月05日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠
最近でも、超過勤務などを原因とする過労死の事例が後を絶ちません。
ご家族が過労死してしまったら遺族のご心痛は察するにあまりあるものですが、過労死が発生した場合、労災認定される可能性があります。
労災認定されると「遺族補償給付」などのさまざまな給付金を受け取ることができますが、労災認定を受けるためにはさまざまな知識が必要です。
今回は、過労死で労災認定されるための7つのポイントをご紹介します。
過労死とは?
そもそも過労死とはどのようなことか
「過労死」は一般用語にもなっていますが、一般の認識と法律的な定義には異なる点があります。ここでは法律にもとづいた正しい知識を押さえておきましょう。
過労死は「過労死等防止対策推進法」という法律によって定義されています。
そこでは「業務における過重な負担による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡~またはこれらの脳血管疾患もしくは心臓疾患」とあります。
そのままでは非常にわかりにくいのですが、わかりやすく言うと「過重勤務によって脳血管の病気や心臓疾患が急激に悪化し、発作などを起こして死亡したり、一生働けないほどの重大な後遺障害が残ったりした場合」ということです。
過労死の労災認定基準
過労死した場合、労災認定を受けられる可能性がありますが、そのためには「労災の過労死認定要件」をクリアする必要があります。厚生労働省が発表しているので、その内容を押さえておきましょう。
特定の疾病であること
過労死として認定されるためには「特定の疾病」であることが必要です。具体的には以下の脳疾患や心疾患が認定対象となります。
1.脳血管疾患
➀ 脳内出血(脳出血)
➁ くも膜下出血
➂ 脳梗塞
➃ 高血圧性脳症
2.虚血性心疾患等
➀ 心筋梗塞
➁ 狭心症
➂ 心停止(心臓性突然死を含む。)
➃ 重篤な心不全
➄ 解離性大動脈瘤 上記の診断名がついていたら、過労死として労災認定を受けられる可能性があります。
異常な出来事や過重勤務があったこと
次に、上記の症状が発症する前に「異常な出来事」や「過重勤務」があったことが必要です。異常な出来事
異常な出来事とは、極度の緊張や恐怖などの大きな精神的負荷がかかる出来事(精神的負荷)や、緊急的に強度の身体的負荷がかかる出来事(身体的負荷)、急激で著しい作業環境の変化があったこと(作業環境の変化)です。たとえば、以下のような場合が異常な出来事をいうことができます。
・業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合(例えば、機械の操作中に機械が暴走して、同僚を死亡させてしまった場合)
・事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合(例えば、火事が起こった際の鎮火や災害が起こった際の給水のために激しく活動した場合)
・生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
・著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を行った場合
・著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業、温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合
短期間の過重勤務
短期間の過重勤務とは、発症前の1週間程度の間において、日常と比べて特に過重な労働が続いた場合を意味します。労働時間や不規則勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い勤務、深夜勤務や交代の多い勤務、作業環境が悪い勤務や精神的負荷を伴う勤務の有無や程度により、「過重勤務」かどうかが判断されます。
例えば、以下のような場合です。
・発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
・発症前おおむね1週間継続して、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合
長期間の過重勤務
異常な出来事や短期間の過重勤務がなくても「長期間の過重勤務」の要件によって過労死と認められる可能性があります。長期間の過重勤務とは、発症前6か月間において労働者に負担となる過重労働があったことを意味します。
具体的には、以下のようなことが判断のポイントとなります。
◉発症前6か月の間、毎月45時間を超える時間外労働があったか、それが継続していたか、45時間を超える時間外労働は何時間に及んでいたか
◉発症前1か月間に100時間以上の超過勤務があったか
◉発症前6か月間に80時間以上の超過勤務が続いていたか
上記をみると、月80時間以上の超過勤務がないと労災認定されないようにも見えますが、実際にはそうとも限らず、月80時間未満でも認定を受けている例はあります。
また、労働基準監督署や審査請求で労災と認められなくても、裁判所における訴訟によって労災認定されるケースも多数存在します。
労働時間と労働時間以外の負荷要因の考え方
労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断することとされています。その際、上記の労働時間のの水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断することとされています。
ここで、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮するに当たっては、労働時間がより長ければ労働時間以外の負荷要因による負荷がより小さくとも業務と発症との関連性が強い場合があり、また、労働時間以外の負荷要因による負荷がより大きければ又は多ければ労働時間がより短くとも業務と発症との関連性が強い場合があることに留意することとされています。
労働時間以外の負荷要因としては、例えば以下のような要因が考えられます。
(1)勤務時間の不規則性(拘束時間の長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則な勤務・交代制勤務・深夜勤務)
(2)事業場外における移動を伴う業務(出張の多い業務、その他事業場外における移動を伴う業務)
(3)心理的負荷を伴う業務
(4)身体的負荷を伴う業務
(5)作業環境(温度環境、騒音)
過労死の認定を受ける手順
次に、過労死の認定を受ける手順をご紹介します。労働基準監督署に申請
労災認定を行っている機関は、地域の労働基準監督署です。そこで、過労死の労災認定を受けたいときには、労働基準監督署に対し申請を行う必要があります。
また、労災申請の際には「労災申請書」などのまとまった書類を提出するものではありません。
個々の労災給付内容ごとに、給付金の申請書を提出しなければならないのです。
労働者が過労死した場合、労災給付として受け取れるのは主に「遺族補償給付」及び「葬祭料」です。
そこで、「遺族補償年金支給請求書」と「葬祭料請求書」を別々に作成して、それぞれ労基署に提出する必要があります。
これらの請求書の書式については、厚生労働省のウェブサイト上にあるので、ダウンロードして利用しましょう。 (労災保険給付関係請求書等ダウンロード)
請求書には、事業主が記載する欄もありますが、事業主が協力しない場合には、その旨を記載して提出すると、受け付けてもらえます。
戸籍謄本や死亡診断書などの添付書類も必要となりますし、脳疾患や心疾患や異常な労働環境や過重勤務によることを説明する意見書なども添付すべきです。
書類を提出すると、労基署において調査が行われます。
調査では、遺族にも聞き取りが行われますが、会社や病院などにも照会が行われ、詳細な事項が調べられます。
このとき、遺族としては受動的に調査を受けるだけではなく、労基署に積極的に連絡をするなど、調査に関わることも重要です。
労基署による調査が終了して労災認定が行われるまでには、だいたい半年程度がかかります。
審査請求、再審査請求
労基署による認定の結果、労災給付が「不支給」となる可能性もあります。不支給とは、過労死が労災として認められなかったということです。
この場合には、「労働災害補償保険審査官(労災保険審査官)」に対し、審査請求をすることができます。
審査請求とは異議申立のような手続きであり、労災保険審査官があらためて過労死が労災に該当するかどうか、判断します。
労災保険審査官も労災を認めず棄却した場合には、「労働保険審査会」に対して再審査請求を行うことも可能です。
再審査請求により、改めて労働保険審査会が判断をするので、判断が変更されて労災が認められる可能性があります。
訴訟
労災保険審査官に審査請求をしても認められなかった場合や、申請後3か月を経過しても判断が行われなかったときには、再審査請求をせずに行政訴訟によって争うことが可能です。再審査請求が認められなかった場合にも、やはり行政訴訟を提起できます。
行政訴訟とは、労災保険審査官や労働保険審査会などの行政機関に対する訴訟で、行政機関による判断内容に不服がある場合、それを変更してもらうための裁判です。
行政訴訟は、対象の行政機関がある地域の「地方裁判所」に提訴します。
裁判所における労災認定要件は労基署や労災保険審査官、労働保険審査会の認定要件と多少異なる点があるので、これらの行政機関で労災認定されなかったケースでも、裁判によって判断が覆るケースがいくつもあります。
労基署などで労災認定されなかった場合でも、諦める必要はないので弁護士に相談することをおすすめします。
労災認定の時効
過労死で労災申請する場合「時効」にも注意が必要です。労災給付の請求権には時効があり、具体的な期間は以下のようになっています。
◉療養補償給付、休業補償給付、介護補償給付、葬祭料は2年
◉遺族補償給付と障害補償給付は5年
2年を過ぎると葬祭料の申請はできなくなりますが、遺族補償給付であれば申請できる可能性があります。
どちらにしても労災申請を検討しているのであれば、できるだけ早い段階で申請することが大切です。
過労死の証明資料について
過労死で労災認定を受けるためには、証明資料を集めることが重要です。過労死の認定要件に当てはまることを証明できなければ、労災認定されないからです。
労災申請前に集めるべき証拠、資料
まずは労災申請前に、以下のような書類を集めましょう。診断書
労働者が過労死の労災認定基準に該当する脳疾患や心疾患にかかっていたことの証明資料として必要です。
病院の医師に作成してもらいましょう。
タイムカード、出勤簿
労働者がどのくらい時間外労働をしていたのかを証明するために必要です。
賃金台帳、給与明細書
時間外労働手当がどのくらい支払われていたのか、あるいは支払われていなかったのかを証明するのに必要です。
未払い残業代がある場合には、会社に対して請求することも可能です。
最終退出簿
時間外労働により会社を退出する時間が遅ければ、最終退出簿に記録が残っています。
施錠記録簿
本人が最後に施錠した場合などには、施錠記録簿にその記録や時間が残っています。
作業日報、業務日報
作業日報や業務日報、営業日報などを見ると、本人の労働時間が判明することが多いです。
警備記録
警備記録によっても、時間外労働の証明につながるケースがあります。
携帯電話の発着信の記録
本人が使っていた業務用の携帯電話があれば、そこからの発着信記録を調べることにより、時間外労働を証明できる可能性があります。
発着信があるということは、その時間業務を行っていたということになるためです。
業務上のメール送受信の記録
本人が業務上利用していたメールアドレスでやりとりがあった場合には、その時間は働いていたということになるので労働時間を証明できます。
パソコンのログインログオフ記録
パソコンを使う仕事の場合、業務の開始時にパソコンにログインし、業務が終了するとログオフすることが通常なので、これらの記録を見ると時間外労働が明らかになります。
ICカードの記録
事業所が入っているオフィスビルの入出館の記録や、交通ICカードの利用履歴を確認することにより、労働時間の証明につながります。
ETCカードの利用履歴
車で通勤している場合には、ETCカードの利用履歴を確認することで、通退勤した時刻が明らかになって時間外労働を証明できるケースがあります。
タクシーの領収証
残業が深夜に及んでタクシーで帰宅した場合などには、タクシーの領収証によって時間外労働を証明できます。
本人の手帳やカレンダーなど
本人が手帳やカレンダーに詳細に仕事の予定を記入していた場合などには、こうしたものも労働時間証明の証拠として使えます。
上司とのやり取りを示すメモ、メール、指示書
上司から、時間外労働の指示書やメモを渡されていた場合や、そういった内容のメールが来ていた場合には、それらも時間外労働を示す資料となります。
上記の証拠資料は、あらゆるケースですべて必要というわけではありません。
また、ケースによっては上記にはないものが有効になる可能性もあります。
過労死で労災申請しようとしたとき「手元に証拠がない」という理由で諦めてしまう遺族の方もおられますが、諦める必要はありません。
一見証拠がないように見えても、立証できるケースは多々ありますので、あきらめずに弁護士に相談することをおすすめします。
証拠の集め方
自宅に保管されている証拠の集め方
上記のような証拠を集めたいとき、まずは労働者の所持品や仕事用のカバンなどを確認しましょう。手帳や給与明細書、携帯電話、パソコン、タブレットなどが入っていることがあります。
これらの資料は、比較的遺族が自力で確認しやすいです。
給与明細書などの書類は、毎月きちんととっている人も多いので、保管場所を知っていたら参照すると良いですし、知らなければ自宅内や労働者の室内などを探す必要があります。
また、最近では給与明細書が電子化されている会社も増えているので、そのような場合には、パソコン上からデータにアクセスする必要があります。
会社が保管している証拠の集め方
労災申請に必要な証拠の中には、会社側が保管しているものが非常に多いです。たとえばタイムカードや各種の日報、業務用のパソコンのログインログオフ記録や賃金台帳など、すべて会社が管理するものです。
これらについては、まずは遺族が会社に対し、任意の提出を求めると良いでしょう。
この場合「〇〇を提出してほしい」と個別に特定して請求すると、会社側も対応しやすいです。
ただし、自分たちで思いつく他にも資料があるかもしれないので、なるべく多くの例示をした上で「これらに準じる資料すべて」というように範囲を広げて開示の申し入れをしましょう。
会社が任意に開示をしない場合の対処方法
会社は労災申請に非協力的であることも多いです。また、時間外労働が明らかになると、会社は遺族から残業代請求される可能性もありますし、会社による労務管理が不適切であったということになると、会社に対する社会的信頼が低下しますし、遺族から損害賠償請求される可能性もあります。
そこで、会社としては、なるべくこうした不祥事が明らかにならないように、証拠を開示しないケースが多いのです。
そのようなときには「証拠保全」という方法で、会社に強制的に証拠開示させることができる手続きがあります。
証拠保全とは、放置しておくと裁判に必要な証拠が散逸してしまうおそれがあるケースなどにおいて、裁判所に申立をすることにより、証拠を確保する手続きです。
当日、裁判官が対象の事業所などに行き、関係資料を確認して現状を保存します。
これにより証拠が手に入りますし、会社が後に証拠隠滅や偽造、変造しようとしてもできなくなります。
意見書の作成
労災認定を受けるためには、申請者側で意見書を作成することを推奨します。意見書とは、本人の発症した脳疾患や心疾患が業務に起因することと、そう考えられる理由をまとめた書類です。
労災を申請すると労基署が職権で調査を行いますが、労基署に任せっぱなしの受動的な立場では、なかなか認定を受けにくいものです。
単に証拠資料を提出しただけでは、労基署の担当官が証拠の深い意味を考えず、事実関係を拾い出してもらえない可能性があるからです。
証拠と証拠を説明する主張を揃えて提出することにより、認定を受けられる可能性が大きく高まります。
遺族が自分たちで集めた資料にもとづき「異常な出来事がなかったか」「具体的にどのくらい時間外労働が行われていたのか」「時間外労働や異常な出来事と発症との因果関係」をなるべく説得的に記載しましょう。
また、意見書を作成するときには「労災認定基準」も意識しておく必要があります。
単に「時間外労働が続いていて心配だった」「本人が疲れた様子だった」などと書いても、労災認定にはつながりにくいです。
そうではなく「~という出来事があり、それは異常な出来事と言える」「発症前1か月の間に〇〇時間もの時間外労働をしており、短期間の過重勤務に該当する」など、何がどの労災認定要件に該当するのかを説明する必要があるのです。
意見書を作成するときに、効果的な方法がわからない場合には弁護士に相談することをおすすめします。
過労死について、裁判所の認定基準
労基署や労災保険審査官、労働保険審査会が労災を認めなかったケースでも、裁判所に行政訴訟を起こせば労災認定される可能性があります。行政機関と裁判所とでは労災の認定基準が異なるためです。
以下では、裁判所の労災認定基準がどのようなものとなっているのか、ご説明します。
裁判所は、以下の3つの要件を満たす場合において、脳疾患や心疾患による労災を認定します。
◉本人が携わっていた労働が、本人の基礎疾患の自然な経過を超えて悪化させる程度の過重負荷をかけるものであった
◉本人に基礎疾患があっても、それが自然に発症する寸前にまでは至っていなかった
◉過重勤務以外に明確な発症要因がないこと
この考え方を「3要件説」と言い、多くの判例もこれに従って判断をしています(最高裁平成9年4月25日、最高裁平成12年7月17日、最高裁平成16年9月7日、最高裁平成18年3月3日など)。
また、労基署などが労災認定するときには、「業務の質」よりも「業務時間」が重視されることが多いのですが、裁判所が認定するときには、時間だけではなく質も重視されます。
たとえば夜間の交代勤務が続いていた場合や海外出張が続いていた場合、看護師などで不規則勤務が続いていた場合などには、訴訟をすると、時間外労働時間が異常に長くなくても過労死として認定される可能性があります。
さらに労働者に基礎疾患がある場合の取扱いも異なります。
労働者にもともと高血圧や高脂血症等の疾患がある場合、行政機関では「自然的な憎悪」と判断されて、労災を否定されるケースが多いです。
これに対し、裁判所では上記の3要件に該当すると労災認定されるので、基礎疾患が相当重くても過労死と認められている例があります。
たとえば、本人にもともと高血圧症や脳動脈瘤のあったケースで労災認定を受けられた事例もあります。
以上のようなことから、労働基準監督署や労災保険審査官、労働保険審査会などで「不支給」となった場合でも、行政訴訟を起こすと労災認定されるケースが多いです。
あきらめずに、弁護士に相談してみてください。
過労死で労災認定を受けるために必要なこと
ご家族が過労死したときに労災認定を受けるために必要な対応をご紹介します。的確な主張と立証
労基署などの行政機関に申請をするときにも裁判所で行政訴訟を起こすときにも、的確な主張と立証を行うことが重要です。つまり、事実を正確に説明し、それを証拠によって証明することです。
具体的には、労災認定基準を理解した上で、労働者の労働環境や具体的な時間外労働時間などを証明し、それらが認定要件に該当することを説得的に説明しなければなりません。
労基署と裁判所とでは認定基準が異なるので、それぞれに対応した対応が必要です。
証拠を収集
労災認定を受けるためには、事前にしっかり証拠を集めておくことが重要です。そのためには会社に任意開示を求めるだけではなく裁判所を利用した証拠保全なども活用すべきですから、自分たちだけでは対応が困難な場合は弁護士にご相談下さい。
積極的に調査に関わること
労基署で労災認定のための調査が行われるとき、遺族としても積極的に関わることが重要です。たとえば、調査の状況を折に触れて確認したり担当官に面会を求めて経過を聞いたりしましょう。
期限に注意する
労災申請には期限があるので、注意すべきです。まずは時効があり、葬祭費は2年、遺族補償給付は5年となっているので、必ず2年以内に請求を行う必要があります。
また、不支給となった場合の審査請求や再審査請求にも期間制限があります。
労基署で不支給となった場合の審査請求は、不支給決定が行われた日の翌日から3か月以内に行う必要があります。
また、審査請求で棄却された場合には、棄却されてから2か月以内に再審査請求をする必要があります。
審査請求や再審査請求で棄却された場合に行政訴訟を提起するには、決定後6か月以内に行う必要があります。
審査請求をしても3か月以内に決定が行われない場合にも、行政訴訟を提起できます。
このように、労災申請の諸手続には期限や期間がかかわるので、正しく理解しておく必要があります。
過労死が発生したとき、適切に労災認定を受けるには当初から弁護士に依頼することが大切です。
いったん労基署で判断がでた後に審査請求や再審査請求で決定を変更させることはハードルが高く、当初の労基署への申請の段階から適切に対応しておく必要があるからです。
ご家族が過労死してこれから労災申請しようとしている方、行政訴訟等お考えの方は、お早めに弁護士までご相談下さい。